HACCP(ハサップ)義務化!わかりやすく解説


 

食品の製造・流通のグローバル化を受け、2018年6月に可決した改正食品衛生法によって、日本でも2020年6月1日より「HACCP導入の義務化」が始まりました。そして一年の猶予期間を経て、2021年6月からは「HACCP完全義務化」全ての食品関連事業者に求められます。今回は、そんな「HACCP(ハサップ)義務化」の基本的な情報を簡単にご紹介します。

(公開:2020年12月30日/更新:2024年7月31日)


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【 目 次 】

HACCP(ハサップ)義務化はいつから?

HACCP(ハサップ)とは

HACCP(ハサップ)と従来の検査の違い

HACCP(ハサップ)導入の対象となる事業者は?

「HACCPに基づく衛生管理(旧基準A)」と「HACCPに沿った衛生管理(旧基準B)」とは

HACCP(ハサップ)導入の対象外となる事業者は?

HACCP(ハサップ)導入のメリット

違反した場合の罰則について

『改正輸出促進法』に伴う食品の輸出事業者に対する支援措置

HACCP(ハサップ)義務化! わかりやすく解説 まとめ

 

■HACCP(ハサップ)義務化はいつから?


 

2018年6月、「食品衛生法」の改正法案が可決され、2020年の6月から食品を扱う全事業者に対してHACCPによる衛生管理の義務化が開始しました。2020年の法律施行から1年間は猶予期間として設けられ、2021年6月からは、HACCP導入・運用が完全義務化となります。

 

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■HACCP(ハサップ)とは


haccp_about

「HACCP(ハサップ)」は、アメリカのアポロ計画の中で宇宙食の安全性を確保するために発案された衛生管理手法です。その後、食品業界に評価されたことをきっかけに、次第に世界に広がり、いまでは衛生管理の国際的な手法となりました。

「HACCP」の意味ですが、「Hazard(危害), Analysis(分析), Critical(重要), Control(管理), Point(点)」の頭文字をとってできた造語です。

 

HA:危害要因分析(Hazard,Analysis)

有害な微生物、化学物質や異物(金属等)が、原材料由来や製造過程で食品中に混入・増殖することで発生する可能性がある「危害(健康への悪影響)」を予測して、これらを管理する方法を明確にし、ルール化する。

 

CCP:重要管理点(Critical,Control,Point)

食品中の危害要因に対して健康を損なわない程度にまで確実に減少・除去するために、HA(危害要因分析)に基づき、特に重要な製造・加工工程を管理する。
・例:加熱・冷却・包装 の時間や温度管理

この様に、HACCPは製造工程を細分化し、工程ごとのリスク管理を行います。これにより、問題がある商品の出荷を防ぐことができます。万が一、食品事故が発生した場合でも、どの工程に原因があるのかを迅速に究明し対応することができます。

 

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■HACCP(ハサップ)と従来の検査の違い


従来の方式は、「包装」から「出荷」での「抜き取り検査」が主流です。HACCP(ハサップ)方式は、原材料の受け入れから加工・出荷までの各工程で、「微生物による汚染や異物の混入などの危害を予測」し、「危害の防止につながる特に重要な工程を連続的・継続的に監視し記録する」といった、製品の安全性を確保する衛生管理手法です。これまでの最終製品の抜き取り検査に比べて、より問題のある製品の出荷防止を可能にしました。

 

 

■HACCP(ハサップ)導入の対象となる事業者は?


対象は「食品の製造・加工、調理、販売、飲食店などの食品を扱うすべての事業者」です。大規模な食品工場や、食品を加工しない販売のみのスーパー、個人経営の飲食店もHACCPを導入しなければなりません。

また、学校や病院等の営業ではない集団給食施設も、HACCP に沿った衛生管理を実施しなければなりません(ただし、1回の提供食数が20食程度未満の施設は対象外)。

しかし、小規模事業者と大規模事業者とでは、人員や資金面で差が出てしまいます。そこで改正食品衛生法では、事業規模ごとの基準を設けています。

 

一般事業者…従業員数が50名以上の企業

→ HACCPに基づく衛生管理(旧基準A)

 

小規模事業者…従業員数が50名未満で、一般衛生管理の対応範囲内の業種

→ HACCPに沿った衛生管理(旧基準B)

※従業員数:アルバイト・パートタイマー含む。

 

 

■「HACCPに基づく衛生管理(旧基準A)」
「HACCPに沿った衛生管理(旧基準B)」とは


HACCPに基づく衛生管理(旧基準A)〈対象:一般事業者、と畜場、食鳥処理場〉
Codex ※ の「 HACCP 7原則」に基づき、食品等事業者自らが、使用する原材料や製造方法等に応じ、計画を作成し、管理を行う。

 

HACCPに沿った衛生管理(旧基準B)〈対象:小規模事業者〉
各業界団体が作成する手引書を参考に、簡略化されたアプローチによる衛生管理を行う。

 

具体的な内容は、厚生労働省のWEBサイトで手引書等が公開されています。また、保健所でも相談ができますし、業界団体のセミナーへの参加や、外部アドバイザーを採用するなどし、導入に向けて進めていきましょう。

※Codex(コーデックス)とは:国連機関であるFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で1963年に設立した国際食品規格委員会及び食品規格。日本を含む187ヶ国と1機関(EU)が加入している。

 

 関連記事「HACCP(ハサップ)導入のための「 7原則12手順 」とは」↓

 

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■HACCP(ハサップ)導入の対象外となる事業者は?


「公衆衛生に影響が少ない(食品衛生上のリスクが低い)事業者」は、HACCPに沿った衛生管理を行う必要はありません。ただし、従来の一般衛生管理は当然ながら必須です。

〈 HACCP導入対象外の業者 〉

① 食品又は添加物の輸入業
② 食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業(ただし、冷凍・冷蔵倉庫業は除く。)
③ 常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品の販売業
④ 合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
⑤ 器具容器包装の輸入又は販売業

※上記のうち、①~③及び⑤の営業者については、衛生管理計画及び手順書の作成も不要です。
※学校・病院等の営業以外の給食施設のうち、1回の提供食数が20食程度未満の施設や、農家・漁家が行う採取の一部と見なせる行為(出荷前の調製等)についても、営業届出及び衛生管理計画・手順書の作成は不要です。

 

 関連記事「【飲食店・メーカー・スーパー】HACCP(ハサップ)対象となる事業者とは?」↓

 

 

■HACCP(ハサップ)導入のメリット


HACCP導入で考えられるメリットをまとめました。

① 社員・スタッフの衛生管理に対する意識の向上

② 生産効率の向上

③ 製品の不具合発生時に迅速な対応ができる

④ クレーム・事故の減少

⑤ 自社の衛生管理のPR力がアップ

⑥ 取引先や販路の拡大

関連記事「HACCP(ハサップ)導入のメリットとは?」↓

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■違反した場合の罰則について


2020年12月時点では、HACCP導入違反自体の罰則は定められていません。ただし、今後は罰則が設けられる可能性もあります。「罰則がないなら、導入は後回しでいいや…」という判断は危険です。食品事故が発生した場合、社会的な信用失墜だけではなく「営業停止処分」「HACCP導入を前提とした将来的な取引が消える」、「HACCP先進国への輸出停止になる」といったリスクが考えられます。結局は、食品の徹底した衛生管理のためにHACCP導入を無視することはできません。

関連記事「HACCP(ハサップ)義務化 ― 違反すると罰則は?!」↓

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※参考:厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」

 

 

■『改正輸出促進法』に伴う食品の輸出事業者に対する支援措置


2022年10月1日の改正輸出促進法の施行に伴い認定輸出事業計画に従って実施する事業者に対して様々な支援策が設けられています。この機会に利用してみるのも良いでしょう。

●農林水産物・食品輸出基盤強化資金

●農林水産物・食品の輸出拡大に向けた税制上の措置

食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業

●日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット制度

●食品等流通合理化促進機構による債務保証

※詳細は農林水産省 輸出・国際局 輸出支援課や各自治体窓口にお問い合わせください。

 

 

■HACCP(ハサップ)義務化!わかりやすく解説 まとめ


すでにHACCP義務化は始まっています。まずは、あなたの会社が対象となるかどうかの確認から始めましょう。対象となる場合は、厚生労働省や各団体の手引書などをまず参考にしましょう。

HACCP導入違反に対する罰則は現時点ではありませんが、将来的には罰則が設けられる可能性もあります。このタイミングで、HACCP導入を進めるのがベストです。

導入には全社員が一丸となって取り組む必要があります。時間がかかる作業ですので、早めに対応していきましょう。

※参考:厚生労働省HP HACCPページ

 

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